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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

ギリシャの女子学生に会った

                   ≪十月十九日≫   ―爾―

                 JOSEPH HOUSE 
 
                   9231204 

            13 MARKOU MOUSSOURIST. ATHENS  

          PICK UP SERVICE FREE WHEREVER YOU ARE IN

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*********************

   ここから、ジョセフ・ハウスは案外近かった。
 上りの坂道の途中の閑静な住宅地に建っている。
 目印の看板には、ベッドで眠っている人の足の裏が正面に見えるデザイン 
 で出来ていた。
 なかなか面白い構図ではないか。

   玄関を入ると、決まって真正面に階段がデーンと構えているのが常道 
 だ。
 そして、大概は、二階に本当の事務所や受付がある。
 ここジョセフ・ハウスの造りも同じだった。
 ドアを開けると、食堂兼リビングになっていて、毛唐が何人かくつろいで 
 いる姿が目に入ってきた。

   トランプに興ずるもの、本を読んでいるもの、さまざまな旅人が居  
 る。
 昼間だというのに、日が差し込まず電灯が光っている、薄暗い部屋だ。
 右の部屋がマネージャー室らしい。
 早速、部屋に入りチェックインを済ませた。

   B&B(ベッド&ブレックファースト)とは、・・・・・つまり朝食付宿 
 泊の意味なのだ。
 これで一泊・・・60DR。
 日本円で≒540円。
 もちろん・・・ドミトリーだ。
 ドミトリーとは、一部屋に何人か宿泊客が居るという意味だ。

       受付「ここに泊まっている日本人は、君の仲間たちか?」
       俺 「そうだ!」
       受付「同じ部屋の方が良いだろうが、あいにくベッドが一杯                                            だ。他の部屋でも良いか?」
       俺 「問題ない。」
       受付「よろしい!じゃあ、部屋に案内しよう!」

   建築基準法に違反しそうな、急で狭い階段を下りて、下の階の部屋に

 通される。
 ・・・・とすると、ここは一階・・か?
 ・・・・まてよ、可笑しいな。
 もう一つ下に階段が続いているぞ・・・・。
 正面玄関から入ると、二階にオフィスがあるのに、裏口から入るとオフィ

 スは三階になる・・・・。

   部屋の中は、総じて薄暗い。
 俺の通された部屋は、ベッドが三つ置かれてあり、先客が一人居た。
 アラブ人のようだ。
 昼間は眠っていて、夕方になると出かけていくらしい。
 荷物を置くとすぐ、部屋を出た。


                     *

   ジョセフHOUSEとシンタグマ広場の、ちょうど中間点に大きな公園があ

 る。
 その中ほどに、美術館らしき大きな建物が凛と建っている。
 「Zapeion(Exhibition Hall)」と書かれている。
 建物の前は大きな広場になっていて、いつも風船売りや焼き栗の屋台が店

 を連ねていて、人垣が出来ていた。
 いくつかのベンチもあったが、ほとんどが占領されている。
 のんびりと日光浴をしているのだ。

   そんなベンチの一つに腰掛、手紙にもう一度目を通す。
 そうしていると、エーゲ海のような真っ青なセーラー服を着た女子学生 

 (高校生だろうか)が、10人ばかり俺のベンチにやってきた。
 しばらく、グループでおしゃべりしていたが、どうやらお目当ては俺らし

 い。

       女子学生「ねえ、ねえ!あそこに東洋人がいるわよ、ちょっ                                              と行って見ようよ!」

   そういうわけで、おっかなびっくりで、俺に近づいてきたらしいの 

 だ。
 ニッコリ笑って、隣の学生に声をかけた。

       俺   「コンニチワ!皆、学生なの?」
       女子学生「ええ、そうよ!あなた・・・日本人でしょ!」
       俺   「もちろん。制服着てるけど、授業中じゃあない                                               の?」
       女子学生「そうよ。野外授業でこの公園に来てるの!」

   お互い知っている限りの英語を駆使しながら、結構は意味は通じてい

 たようだ。
 キャッ!キャッ!と話の途中でも騒いでいる。

       女子学生「ギリシャは・・・どうですか?」
       俺   「実は、昨日到着したばかりで、それ程知ってはい                                              ないけど、気に入ってるよ!」
       女子学生「ワーッ!ありがとう。いつまで居るんですか?」
       俺   「一ヶ月くらいかな。」
       学生  「それから、日本に帰るの?」

       俺   「いや、ギリシャからヨーロッパ中を回って、イギ                                              リスに渡って、日本に帰るのは                                                      来年の夏くらいかな。」
       学生  「良いな!・・・・ねーっ、日本ってどんなとこ                                              ろ?」
       俺   「良い所さ!」
       学生  「東京に住んでるの?
       俺   「東京って知ってるの?嬉しいな。俺は東京から来                                              たんだ。」

   話は盛り上がり、しばらく続いた。
 そうしているうちに、先生が集合をかけたらしく、一人の学生が走り出す 
 と、ベンチに座っていたほかの学生たちも、それに呼応するように飛び上 
 がるようにして走っていく。
 横に座っていた学生は、立ち上がると言った。

       女子学生「アテネは・・・好き?」
       俺   「ああ、大好きになりそうだ。」
       学生  「ありがとう!」

   満面の笑顔で走っていく。
 また、振り返る。
 女子学生たちが遠く小さくなって、手に持っていた手紙に目を落とし、静 
 けさを取り戻した。
 二時間は座っていただろうか。
 ベンチを立って歩き出すと、さっきの女子学生だろう、手を振っているの 
 が見えた。


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